ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演。
役所広司さんはこの映画でカンヌ国際映画賞の主演男優賞を受賞なさっています。
〈あらすじ〉
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
〈感想〉
ネタバレがあります。
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役所広司演ずる平山は寡黙に1日1日をきっちりと同じように生活しています。
でもその判で押したような生活に、家出してきた姪やずっと会ってなかった妹などと出会ったり、いつも座ってる居酒屋の椅子が別のお客さんがいて端っこに座ることになったり、若い同僚が急にやめてシフトを自分一人で埋めることになったりといったちょっとした嵐も起こります。
しかし、またその嵐は収まって、いつもの日常が戻ってきます。
でも毎日はどれも同じではないのです。
少しづつ変化し続けています。
平山が車の中で聴く70年代の音楽のカセットテープや、フィルムカメラを若い人がとても珍しがって喜びます。
若い人がデジタルではないアナログに惹かれるのは、きっとこれらのアイテムが「今」という時間を形としてはっきり認識できるモノだからなのでしょうね。
平山が姪っ子ちゃんと自転車に乗りながら「今度は今度、今は今」と二人で歌うように言ってる言葉はきっとこの映画のテーマなのではないかと思いました。
ラストの外の景色を眺めながら運転する平山の表情は笑ってるようで泣いてるようで、どちらなのかはっきりしません。
映画では説明がありませんが、平山はおそらくトイレ清掃員をする前は、地位のある仕事をしていたのではと推測されます。
とても大変なことがあったのでしょう。
でも平山の「今」は笑顔になることもあれば、涙をすることもある、そんなパーフェクトな毎日なのだと思いました。
大きなことが起こらない映画だけど、とっても良い映画でした。